セオ部(SEO部)

アドテク、キャリアは他の人に任せて、SEOトピックと持論を語ることにします(小学生、業界人向け)。

アドテクノロジーの歴史(4)【アドエクスチェンジの時代】

アドネットワークの時代の次は、アドエクスチェンジの時代(2010年頃~?)です。アドネットワークの時代から大分月日は立ちますが、その間はSEOやリスティング広告、フィーチャーフォン(ガラケー)での広告が盛り上がってきてました。とはいえ、その点はアドテクノロジーの歴史的には直接関連性は薄いので「番外編」で記載するとして、まずはアドエクスチェンジを説明していきます。

 

株ならぬ、広告枠の入札システム!

アドエクスチェンジについてWebで辞書的な意味を調べてみると、その不親切感極まりないことが痛感されますw(もちろん、分かる人にわかるので良いと思いますが)。

アドエクスチェンジとは、オンライン広告のうち、特定の広告枠におけるインプレッションを入札方式によって売買する方式のことである。

出典:アドエクスチェンジとは 「広告枠取引, アドマーケットプレース」 (Ad Exchange): - IT用語辞典バイナリ

 

要は、株の入札システムの広告枠バージョン。もうなんていうか、もう、オークションみたいなもんです。

買いたい広告枠を今までのようにメディアレップやアドネットワーク企業が囲い込むのではなく、広告枠を売りたい人、買いたい人がいつでも自由に取引できるようにしようぜ、というある意味「民主的」な制度なんです。値段もオークションが基本なので、売り手に値段を決められるコトもありません。

アドエクスチェンジ企業で有名どころとしてはGoogleの「Double Click Ad Exchange」(Googleが2009年にDouble Click社を買収)やcciが運営している「OPEN X」でしょうか。

 下の図に、アドエクスチェンジとやらの広告枠入札プラットフォーム(マーケットプレイス)の仕組みを記載してみました。

 

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 【図1:アドエクスチェンジの概念図】

 

アドエクスチェンジのイメージとしては、複数のWebサイトやアドネットワークを繋ぎ合わせた広告ネットワーク。Webサイト、アドネットワークを横断的に広告が配信できるようになりました。

アドネットワークとアドエクスチェンジの違い

アドネットワークはカテゴリー分けされた「Webサイト」ネットワーク全体へ広告配信を行うものでしたが、アドエクスチェンジは広告ネットワークの属性はどうでもよく、「広告枠(もっというと、その裏側にいる「人」)」へ配信する仕組みです。

こうした配信手法が可能になったのは、「ターゲティング広告(2005年頃登場)」の技術が発展したからですが、この辺りの歴史は今でも影のある領域なので、また近いうちに書きます。

また、課金方法も以前の広告のように「クリック課金」や「成功報酬課金」ではなく、インプレッション*1単位で課金されるようになったのが1つの大きな変化でしょう。これは例えば、「○×属性の人に1000インプレッション(1000回の広告表示)を△□円で買う」って入札方法ができちゃうわけです。つまりは、アドネットワークでネットワークに対する課金だったものが、アドエクスチェンジでは広告枠1つに対する課金になったってことです。

でもアドエクスチェンジで広告を入札する際、1つの広告枠に複数の広告主が殺到する、なんてことも考えられますよね。その場合、その広告枠に最も高い値段を付けた広告主へ広告が配信されるオークションの仕組み(RTB※Real-Time-Bidding)が開発され、使われるようになりました。下に色々書きましたが、これはホント、スゴイ技術です。 

インターネット広告業界 民主化の兆し?

アドエクスチェンジの発展は、個人的に広告業界で「民主化(政治的な意味はありません)」が起こったのだと捉えています。というのも、広告枠の値段を媒体社側や代理店側が決めるのではなく、広告主が決められるようになったからです(ここは次回アドテクノロジーの歴史(5)でもうちょい詳しく書きます)。

 

アドエクスチェンジの歴史

アドエクスチェンジは2009年頃アメリカでDouble Click社が営業をスタートしたのを皮切りに、日本では2011年頃、本格的に登場しました(参照:グーグル、入札方式で広告を売買する「アドエクスチェンジ」を日本でも開始 -INTERNET Watch)。

なぜこうしたトレンドが出たのか、背景としてある理由をざーっくりお伝えすると「Webサイトの数がハンパなくなってきたから」です。

1998年にアドネットワークが日本でもちょっとずつ出てきましたが、2005年以降ターゲティング広告が利用されるようになった頃に徐々に流行ってきたと考えています(ターゲティング広告の歴史はまた番外編で)。が、その普及とともに、広告主、媒体社ともに問題が発生し始めました。

 

 広告主さん A:「アドネットワークやら色々な種類のWebサイトを試したけど、結局どこのサイトに広告出せばいいのか分からなくなっちゃったよ」

広告主さんB:「イイ値段でアドネットワークに出稿してみたけど、リーチは広がったものの、実際に見てほしい人に見られてる感が無いなぁ。」

媒体社さんA:「他社Webサイトが増えすぎて、このところウチの広告枠が余っちゃう。収益化したいのになぁ」

媒体社さんB:「アドネットワークに広告枠出してるけど、ウチの枠はもっと高い値段で売れてもいいはずなのに」 

 広告主からは「実際たくさんの人に見てもらったっぽいけど、ホントに効果高まったんだっけ?」という問題が、媒体社は「広告枠の余りを売りたい」「アドネットワーク会社に値段を決められたくない」という問題が発生したのでした。

これらの問題を解決するのが2005年頃に登場した「(オーディエンス)ターゲティング広告」の技術+アドエクスチェンジで可能になった「RTB*2」です。

 

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【図2:RTBのイメージ図】

たとえ媒体社側の「余った」広告枠であっても、そこに訪問するユーザーが広告主がターゲットとしている属性ユーザーなら「その枠、喜んで買います!」ってなるわけです。この仕組みによって、アドネットワークを利用していた広告主から出ていた「ホントに効果あるのかよ(ホントにターゲットに見られてんのかよ)」という不満は解消されるようになります。

 同時に、DSPやSSP(アドテクノロジーの歴史(5)で詳述)が丁度2011年に日本へ参入し始め、アドエクスチェンジが全力で普及し始めるのでした。

 

まとめ。

新しい言葉が登場して紛らわしい領域なので、以下まとめ。

1)サイトの増加に伴う広告枠在庫の増加によって新たな広告技術が求められる。

2)アドエクスチェンジの登場により、余剰広告枠の処理が可能になる

3)既に普及していたオーディエンスターゲティングの技術と新登場したRTBの技術で広告主からの利用が増える

4)広告主はオークションで価格を自分たちで決められ、媒体社は余った余剰広告枠在庫の収益化が可能に(インプレッション課金)

 

 

続く!

*1:広告が一人のユーザーに表示された単位。1に1回表示されれば「1インプレッション」

*2:リアルタイムでの広告枠のオークション売買の技術