アフィリエイト広告の面白さ(って意外とある)。
アドテク寄りのエントリーが多くなったことで、従来からあるような広告に関するエントリーも投稿しようかと。今回はアフィリエイトです。これも広義で言えば「立派なアドテクノロジー」ではないかと思います。
ちなみに、大手ASP*1の動きを見ていると、アフィリエイトだけではなく、独自のアドネットワークやアプリ開発も盛んのようですね。個人的には、ファンコミュニケーションズさんの“goody!”というアプリは気になっています。
最初に言っておきます。細かい部分まで書いているんですが、大分長くなってしまいました(笑)最初は基礎すぎてダルい方はぜひ読み飛ばしてくださいませ。
1.アフィリエイト広告とは
まずは、アフィリエイトとは?という一般的な定義から始めます。
ネット広告の課金方式の一つで、Webページやメールマガジンなどの広告媒体から広告主のWebサイトなどへリンクを張り、閲覧者がそのリンクを経由して広告主のサイトで会員登録したり商品を購入したりすると、媒体運営者に一定の料率に従って報酬が支払われる方式。
参考:アフィリエイトとは〔成果報酬型広告〕【 affiliate 】 - 意味/解説/説明/定義: IT用語辞典
つまりは、
「アフィリエイト」=「成果報酬型」の広告を指します。
(成果報酬型広告、CPA広告とも言います)
このところ、アフィリエイトについていろんな方にお話をしてみると、なんだか抵抗がある人が多いように感じます。「ステマ」や「やらせ」といった形容、「1秒で数億稼ぐ」とか言い出すような“曰く付きの”プレーヤーが多いことからこの領域は毛嫌いされているようで残念です。それらは一部の逸脱した方々に当てはまる話であって、本質的にはアフィリエイト広告はもっと奥深く、面白く、且つ広告主にもメディアとっても大変ありがたい広告形態になっています。
2.アフィリエイトのプレーヤーと役割
基本的に、広告主、アフィリエイトサービスプロバイダー(ASP)、媒体社といった3種類のプレーヤーが登場します。ASPはアフィリエイトに特化したweb広告代理店だと認識して頂ければよいでしょう。広告主がアフィリエイトで収益を上げられるよう、優良な媒体社を見つけ出し、育て上げることが、彼らにとってのポイントです。
【広告主】
◎ミッション:優れたプロダクト・サービスをアフィリエイト広告で売る
◎主な役割:優れたサービスの開発
(例)
・金融業界:クレジットカード会員加入(=CV地点)
・旅行業界:旅行予約(=CV地点)
・家電業界:家電購入(=CV地点)
【メディア側】
◎ミッション:アフィリエイト広告で売れるような優良媒体を作る
◎主な役割:広告(ディスプレイ、リスティング、マス等)を使いながら自社メディアへ集客をする
(例)
・ブログ:アメブロ(各ブロガーたちがコンテンツによって優良媒体を作り、集客も実施)...etc
・ポイントサイト:リアルワールド(お小遣い稼ぎ、といったインセンティブを利用して集客)...etc
・比較サイト:カカクコム、比較コム...etc
・その他サイト:旅行系サイト、金融系サイト…etc
【アフィリエイトサービスプロバイダー(ASP)】
◎ミッション:優良メディア、広告主を繋ぎ合わせ、手数料収益を得る
◎主な役割:アフィリエイト価格交渉、媒体社への集客アドバイス、広告主への広告プラン提案等
(例)
ファンコミュニケーションズ、アドウェイズ、バリューコマース、リンクシェア、インタースペース...etc.
上記の役割をそれぞれ図にしたものがこちら。
※人件費はどの会社さんもかかるので省いてます。
3.アフィリエイト広告の範囲と流れ
繰り返しになりますが、アフィリエイトとは、成果報酬型の広告のことを指します。ブロガー達が我こそはと商品の宣伝をして訪問客に買ってもらうスタイルだけではありません。もっと広いです。また、勘違いされやすいのですが、ディスプレイ広告、リスティング広告のように形やプラットフォームが決まっているものではなく、CPAで測る広告、すなわち、広告主・メディア側が定めた成果(コンバージョン/CV)に到達した時点で課金をするというモデルを意味しており、逆にココが崩れなければ何をやってもいいんです。だからこそ広告としては極めて奥が深く、個人的には好きな部類です。
形をより浮き彫りにするためにお伝えしておくと、アフィリエイト広告(CPA広告)の反対概念はCPC広告(リスティング広告)です。
では、アフィリエイトモデルの核の部分を解説します。
入り口はバナー広告と一緒です。見た目は変わりません。左側(webサイト)がアフィリエイト媒体。そこに掲載されたなんらかの広告をクリックします(この時点でASPがそのユーザーの追いかけをスタートします)。すると、エントリーフォームやLPに飛び、ユーザーは離脱かCVどちらかを行います。見事CVすれば、アフィリエイト広告の課金対象です。
「じゃあ、どの広告もアフィリエイト広告にしちゃえばよくね?成功報酬ならたくさん出して、クリックされなくてもたくさん人目に触れさせるブランディング広告としても使えるんじゃね?」
そう考えると、そうなんです。物理的にはそれもできたりするんです。が、仲介会社のASPさんも黙っちゃいません。彼らはCPAで広告主が支払ったフィーによって生計を立てているので、CPA効果の低い広告は嫌がられます。
つまり、「全然この広告から効果出ないんだけど…」と媒体社からASPへ苦言がはいると、ASP側はその効果の薄い広告を中断、あるいは改善せざるを得なくなってしまいます。これは、広告収益を得ているメディア側も同じです。
※グーグルアドワーズでCPA広告を出す際は、直近1か月でコンバージョンが300だか30だか下限が設けられたりもしています。
4.課金のタイミングは様々
成果報酬とはいえ、複数の着地地点があります。例えば、人材系の会社さんを上げてみます。人材系企業はCVの着地地点として、「転職サービスへの登録」「面談の実施」「成約」等々があります。後ろに行くにしたがって難易度は当然上がるのですが、ASPはCVの難易度に応じてアフィリエイト広告の1CVあたりの価格を調整していきます。当然、難易度が高い方が報酬額も高いですね。
(例)
・ 100名の人がアフィリエイト媒体に出ている広告をクリック(課金なし)
・ 10名の人が転職サービスに登録(課金ポイント①)
・ 1名の人が面談(課金ポイント②)
この場合、当然①より②の方が難易度は高いです。その分価格は高いですが、数は少ないです。そのため、サービスや媒体の性質を見抜きながら、どこに課金地点を置くかという目を養うことがASPのコンサルタントとしては重要になってきます。
ちなみに。
1度アフィリエイト広告を踏むと(上記の場合、離脱した90名)、そのあと一定期間ユーザーは追われます。すなわち、アフィリエイト広告以外経由でCVしたとしても、一定期間の間はアフィリエイト広告経由でのCVであるとカウントされてしまうのです。従って、広告主からすると、アフィリエイト媒体を踏んだユーザーをいかに即CVできるかがポイントになりますね。CVは1人なのに、別媒体からの課金、アフィリエイト広告からの課金といった、ダブルカウントが起きてしまうので…。
5.リスティング運用担当とアフィリエイト広告担当のキャリア(番外編)
CPA広告の対概念、CPC広告でリスティング広告があります。性質的にはどちらも「刈り取り系広告」という認識なので、用途としてはそこまで大きく違いはないのかな、と思います。
参照:ダブルファネルマーケティングの理論と実践/『ダブルファネルマーケティング』特別公開#2-1 | Web担当者Forum
それぞれは丸で囲った上記の位置ですね。認知から、購入へ。リスティング広告は特定のキーワードで検索する顕在的な見込み顧客を刈り取ります。アフィリエイト広告は特定の媒体に訪問した、広告主の広告に興味を持ちそうな見込み顧客を刈り取ります。
…ふと、ここでキャリアについて考えてみました。
両者で行き来する場合ってどうなの??
【パターン①】リスティング⇒アフィリエイト(領域が広がる??)
◎活かせる:
・ 媒体社に対する検索周りの集客アドバイス
・ 効果的なLP作り
◎新たに身につく:
・ 媒体、成果報酬広告の理解
・ ディスプレイ広告等のクリエイティブ
・ 流入からのCVへのコンテンツ編集力
【パターン②】アフィリエイト⇒リスティング(専門性がつく??)
◎活かせる
・ 媒体社の集客に対する知見・経験
◎新たに身に着く
・ 検索キーワードとユーザーの動向
どちらも活かせるものの前者の方は、経験を活かせる分野もあり、広がりはあるように思えます。後者の方は専門性は高まるものの、今までの経験が活かせるかは不明な部分が多そうですね。
大事なのは、どの専門性を突き詰めていきたいか、だと思います。幅広くキャリアを積んできた方は、おそらく30代、40代になって苦労される可能性があります。30代以降は、「専門性」×「マネジメント力」(×「英語力」)です。常に自分はどの領域で強みを発揮していきたいのかは考えておいた方がよさそうです。
*1:アフィリエイトサービスプロバイダーの略。アフィリエイトのネットワークを持っている代理店さん