アドテクノロジーの歴史(5)【DSP、SSPの時代】
ここまでの歴史でアドテクノロジーのコアとなる部分は説明してきました。今回はWeb広告業界でBuzzってる、「DSP、SSP」についての解説です。
業界全体を“RTB”プラットフォームへ!!
今まで、RTBというとアドエクスチェンジ内でしか実現できませんでしたが、DSP、SSPの登場で世の中に出回っているアドネットワーク・アドエクスチェンジ全てをRTBのプラットフォームに乗せることができるようになりました。理論上は、存在するあらゆる広告枠、その裏側にいるオーディエンスに、リアルタイムで広告を配信することができちゃうようになりました。
※ 図:DSPとSSPが構成するRTBプラットフォーム
ここで大事なのは、DSPとSSPは対になってるってことです。磁石のN極とS極、凸と凹、どっちかが欠けていたら上記のシステムは稼働しません。
ちなみに、DSPやSSPってのはなんとなく「凄そうなシステム」ということが分かっていただけたと思いますが、実際にそのシステムを作っている会社があります。例えば、DSPであればフリークアウトさんやマイクロアドさんが、SSPであれば、Kauli(カウリ)さんやジーニーさんが有名どころ。これらの会社さんがアドネットワーク会社やアドエクスチェンジの会社と「一緒に仕事しましょう!」と持ち掛けて、自社のDSP/SSPと接続するわけなんですが、どちらの会社にとっても、自分たちのプラットフォームで広告が売買されるので、大歓迎です。いわばWin-Winの関係になります。
で、そこの収益に関してはどうなってるかというと、前回のエントリーでオークション経由で広告が売買されるってのは説明したと思いますが、こうしたDSP/SSPの会社は自分たちのシステムを導入料金に加え、実際に広告を配信した際に手数料を取ることで成り立っています。なので、インターネット広告が出回れば出回るほど潤うんです。証券会社みたいなもんですね。
DSPとリーマンショックの関係
日本で初めてDSPが登場したのはフリークアウトさんが開発した2011年と言われていますが、このテクノロジーも発祥はもともとアメリカでした。発明のきっかけは実は、リーマンショックと深い関係があるそうです。
2009年頃、サブプライムローンの問題が発端に世界中の金融機関を中心にダメージが広まったリーマンショックですが、この当時、金融機関に在籍していたエンジニアが職を求めてインターネット広告会社に移っていったことがDSPの開発につながったと言われています。DSPもストックマーケットの仕組みに近い部分があることからお気づきのように、金融工学に長けたエンジニアがインターネット広告にその理論を応用し、広告のオークションシステムを作り上げてしまったのでした。
DSPとSSPの役割分担
こんな歴史的背景が紐づいているアドテクですが、それぞれがどんな役割を果たしているんでしょう?以下に記載してみました。
DSP(Demand-Side-Platform)は広告主の味方
【目的】広告主の広告効果を最大限にすること
⓪たくさんのネットワークとつながる
①世の中一般のwebサイト訪問者を様々なセグメントにカテゴライズする
②そのカテゴリーに応じて広告主にオークションをかけさせる
③広告配信をする
④広告配信結果を分析する
⑤分析結果を広告主へレポートする
⑥広告主の目標達成のため、改善プランを提案する
SSP(Supply-Side-Platform)は媒体社の味方
【目的】媒体社の収益を最大化すること
⓪たくさんのネットワークとつながる
①提携先のサイトに来たお目当てのユーザーを判断する
②お目当てユーザーの来訪をDSP側へ知らせる
③媒体に勝者の広告主の広告を掲載する
④媒体社側へレポーティング
訪問者のカテゴリー分け?
ところで、Webサイト訪問者(オーディエンス)の「カテゴリー分け」の話が出てきて、ふと思われた方もいるかもしれませんが、いつどこでどうやってこのようなカテゴリーが形成されているのか?という疑問が湧いてきますよね。
実は、日々この瞬間にも作られ続けています。僕らがWebサイトを見る際、Internet ExploreやGoogle Chrome、Safari等のブラウザを利用すると思いますが、これらブラウザでWebサイトにアクセスするごとにクッキー(cookie)が付与されます(Safariは制限があるようですが)。“クッキー”は、アノ食べるクッキーです。パンくずを道しるべにちぎって落とす、なんて昔話に出てくるような古典的な方法がありますが、それのクッキー版です。僕らはWeb上で通った道にクッキーを置いてきているのです(現実的にはクッキーが「付与される」のですが)。
そのクッキーを辿ることによって、僕らユーザーが過去にどんなサイトをどのくらいの期間に何回訪問して、どのくらいの時間閲覧していたかってことが分かるんです。
これはWebサイト上の履歴でしたが、実はオフライン、リアルの履歴も追われています。何かというと、Tポイントカード等の登録データや購買履歴です。このあたりのオフラインデータをオンラインデータと結びつけ、インターネット広告配信用のデータにされるのです(DMPの章で解説します)。
これら無数の訪問者のデータをオンライン・オフラインの購買データと結びつけて、どんなタイプ(行動履歴)の人はどんなモノを購入する傾向にあるのかというサンプルをたくさん作り、それらタイプに近しい人々をまとめます。その作業がインターネット広告配信で使われるカテゴリーになるわけです(とあるDMPは180種類のカテゴリーがあるとか!)。ちなみに、DSPやSSP事業者はこんな感じのデータをまとめてます。
【付録】図でわかる RTB!~DSP/SSPを活用したRTBってどーなってんの??~
STEP1.
カテゴライズされたお目当て訪問者を認識
STEP2.
各DSPで天下オークション一武闘会を実施
STEP3.
勝者広告主の最終決戦。勝者が支払い。
STEP4.
勝者DSPがSSPへリクエスト。勝者DSPに手数料が入る。
STEP5.
SSPが媒体社に勝者の広告を配信。SSPと媒体社に手数料が入る。
おしまい。
こんな感じのオークションが日本各地で、はたまた世界各地で行われているわけです。まぁお気づきの方もいるかと思いますが、結局予算力がある広告主が強いんじゃん!って話になりえます。ぶっちゃけそうかもしれません。実際、今DSPを使っている広告主さんというのは大手企業さんがメインですから。。。
とはいえ、広告はRTBだけではないので、限られた予算内にどれだけ高い効果が出せるか、というのが広告主側、代理店側のマーケターに求められるスキルですね。