第三者配信から見える日米のインターネット広告の違い
第三者配信(3PAS/スリーパス= 3rd party ad serverとも言われる)という存在が徐々に日本にも知られるようになりましたが、国内では10%程度とまだまだシェアは小さいようです。発祥の地アメリカでは利用率が90%以上とまで言われており、そもそも使わなきゃ勿体なくね?というプレゼンスを確立しているそうです。この違いは何なのでしょう。
日米で違いを考察してみました。
第三者配信は「計測・配信のプラットフォーム」
第三者配信とはその名の通り、第三者として広告を扱ってくれる存在。媒体社のアドサーバー(広告が配信されるトコ)ではなく、中立、第三者のアドサーバーを通じて広告を管理・配信しますよ、という仕組みのコト。広義ではアドネットワークも当てはまりますが、「第三者配信(3PAS)」と表現した場合、それとは別のモノを指します。
展開している事業者として日本で有名なのはこんなところでしょう。
・Sizmec社 (旧Media Mind) ⇒ Sizmec
・Fringe81社⇒Digitalice
・Google社 ⇒ Double Click for Advertiser
予算額が多い広告主はキャンペーンに合わせて多くの代理店やアドネットワーク業者とやり取りをしますが、それに伴い、上がってくる広告効果のレポートも多くなります。実はこれが問題のひとつ。
例えば。合理的な購買欲求が高い主婦の方々を想像してくれればいいかもしれません。僕もたまにやったりしますが、1円でも安い商品を求めて複数のスーパー・デパートを回りながら比較購入しますよね?すると、レシートが多くなります。のちのち家計簿を付ける際、面倒になる。
アドテク業界界隈もそれに似ているんです。
生じる問題は主に以下2つ。
- 代理店ごとの複数レポートを見るのが手間(広告プロモーションはスピードが命!)
- コンバージョンのダブルカウント*1が発生してしまう(広告プロモーションは正確さが命!)
ということ。
第三者配信なら、これらを一括で解決できてしまうんです。
(1)は第三者配信が代理(第三者の立場)で各代理店・アドネットワーク各社から上がってくるレポートを統合的に計測することができるため、より正確なレポーティング業務を行うことができるようになります。(2)も同様で、第三者が代理で配信された広告を管理してくれるので、ダブルカウントは当然除かれますね。
Web広告はスピード、正確性、小さなコストカットの積み重ねが大事です。
にもかかわらず、第三者配信が日本でそこまで流行っていないのはなぜなんでしょう。
アメリカは土地柄・外部要因が大きい。
第三者配信の普及率が高いアメリカはカルチャー的に分断された国という土地柄な問題、それからエージェンシーに対する信頼性の問題が背景にあります。アメリカのエージェンシーから出るレポートは正しくない場合も度々あるようで、監査も入るそうです。
加えて、人種のるつぼと言われるアメリカは地理的に分断されており、その土地ごとに文化や特性があるため、キャンペーンが多様化します。それにより、当然複数の代理店、複数のアドネットワーク、DSPを利用することとなるため、広告管理に比較的負担が圧し掛かってくるようです。
従って、アメリカには中立的な立ち位置の第三者配信を「使わなくてはいけない」といった環境があるんですね。
一方で。日本はインターネット広告の市場規模を見てもらえばわかりますが、まだまだWebでのキャンペーンがまだ成熟していません(その分伸びる余地もあるのですが)。未だに大手の専門サイトに広告を出していればリーチ数が出てくるから大丈夫!という心理があるみたいです。そもそも、日本のキャンペーン市場においてはTV広告の強さが圧倒的。アメリカと違って日本のTVは無料で、古くから日本の生活に根差しているため、影響力が未だに強いみたいなんですね。
大手クライアント・大手エージェンシーが業界を開いていってほしい。
この業界を変えていくのは、○○億クラスの予算を持っている大手広告主、彼らのパートナーである大手代理店だと思っています。広告予算的に余裕がある場合と比べ、予算がない企業は革新的な取り組みに及び腰になる可能性が高いからです。
ただ、直近、国内でもアドネットワークが乱立しており、RTBといったプログラマティック広告も登場し始めており、広告の管理自体が多様化してきているのは事実だと思います。スピード、正確性を従事する広告プロモーション市場において、おのずと必要とされてくる日は近いのではないかと、希望的観測を持っていたりもします。
*1:例えば。A、B、Cという複数の媒体を順番に飛んで1回コンバージョンをした場合、A、B、C社で複数のDSPやアドネットワークをまたいで広告キャンペーンをしていた場合、それぞれの業者から「1コンバージョン」のレポートが上がってきてしまう。それにより、コンバージョンが2以上にカウントされてしまうことがある。