セオ部(SEO部)

アドテク、キャリアは他の人に任せて、SEOトピックと持論を語ることにします(小学生、業界人向け)。

アフィリエイト広告の面白さ(って意外とある)。

アドテク寄りのエントリーが多くなったことで、従来からあるような広告に関するエントリーも投稿しようかと。今回はアフィリエイトです。これも広義で言えば「立派なアドテクノロジー」ではないかと思います。

 

ちなみに、大手ASP*1の動きを見ていると、アフィリエイトだけではなく、独自のアドネットワークやアプリ開発も盛んのようですね。個人的には、ファンコミュニケーションズさんの“goody!”というアプリは気になっています。

 

最初に言っておきます。細かい部分まで書いているんですが、大分長くなってしまいました(笑)最初は基礎すぎてダルい方はぜひ読み飛ばしてくださいませ。

 

1.アフィリエイト広告とは

まずは、アフィリエイトとは?という一般的な定義から始めます。

 

ネット広告の課金方式の一つで、Webページやメールマガジンなどの広告媒体から広告主のWebサイトなどへリンクを張り、閲覧者がそのリンクを経由して広告主のサイトで会員登録したり商品を購入したりすると、媒体運営者に一定の料率に従って報酬が支払われる方式。

 

 参考:アフィリエイトとは〔成果報酬型広告〕【 affiliate 】 - 意味/解説/説明/定義: IT用語辞典

 

つまりは、

「アフィリエイト」=「成果報酬型」の広告を指します。

(成果報酬型広告、CPA広告とも言います)

 

このところ、アフィリエイトについていろんな方にお話をしてみると、なんだか抵抗がある人が多いように感じます。「ステマ」や「やらせ」といった形容、「1秒で数億稼ぐ」とか言い出すような“曰く付きの”プレーヤーが多いことからこの領域は毛嫌いされているようで残念です。それらは一部の逸脱した方々に当てはまる話であって、本質的にはアフィリエイト広告はもっと奥深く、面白く、且つ広告主にもメディアとっても大変ありがたい広告形態になっています。

 

2.アフィリエイトのプレーヤーと役割

基本的に、広告主、アフィリエイトサービスプロバイダー(ASP)、媒体社といった3種類のプレーヤーが登場します。ASPはアフィリエイトに特化したweb広告代理店だと認識して頂ければよいでしょう。広告主がアフィリエイトで収益を上げられるよう、優良な媒体社を見つけ出し、育て上げることが、彼らにとってのポイントです。

 

【広告主】

◎ミッション:優れたプロダクト・サービスをアフィリエイト広告で売る

◎主な役割:優れたサービスの開発

 

(例) 

・金融業界:クレジットカード会員加入(=CV地点)

・旅行業界:旅行予約(=CV地点)

・家電業界:家電購入(=CV地点)

 

【メディア側】 

◎ミッション:アフィリエイト広告で売れるような優良媒体を作る

◎主な役割:広告(ディスプレイ、リスティング、マス等)を使いながら自社メディアへ集客をする

 

 (例)

・ブログ:アメブロ(各ブロガーたちがコンテンツによって優良媒体を作り、集客も実施)...etc

・ポイントサイト:リアルワールド(お小遣い稼ぎ、といったインセンティブを利用して集客)...etc

・比較サイト:カカクコム、比較コム...etc

・その他サイト:旅行系サイト、金融系サイト…etc

 

【アフィリエイトサービスプロバイダー(ASP)】

◎ミッション:優良メディア、広告主を繋ぎ合わせ、手数料収益を得る

◎主な役割:アフィリエイト価格交渉、媒体社への集客アドバイス、広告主への広告プラン提案等

 

(例)

 ファンコミュニケーションズ、アドウェイズ、バリューコマース、リンクシェア、インタースペース...etc.

 

上記の役割をそれぞれ図にしたものがこちら。

 

 

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  ※人件費はどの会社さんもかかるので省いてます。

 

3.アフィリエイト広告の範囲と流れ

繰り返しになりますが、アフィリエイトとは、成果報酬型の広告のことを指します。ブロガー達が我こそはと商品の宣伝をして訪問客に買ってもらうスタイルだけではありません。もっと広いです。また、勘違いされやすいのですが、ディスプレイ広告、リスティング広告のように形やプラットフォームが決まっているものではなく、CPAで測る広告、すなわち、広告主・メディア側が定めた成果(コンバージョン/CV)に到達した時点で課金をするというモデルを意味しており、逆にココが崩れなければ何をやってもいいんです。だからこそ広告としては極めて奥が深く、個人的には好きな部類です。

形をより浮き彫りにするためにお伝えしておくと、アフィリエイト広告(CPA広告)の反対概念はCPC広告(リスティング広告)です。

では、アフィリエイトモデルの核の部分を解説します。

 

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入り口はバナー広告と一緒です。見た目は変わりません。左側(webサイト)がアフィリエイト媒体。そこに掲載されたなんらかの広告をクリックします(この時点でASPがそのユーザーの追いかけをスタートします)。すると、エントリーフォームやLPに飛び、ユーザーは離脱かCVどちらかを行います。見事CVすれば、アフィリエイト広告の課金対象です。

 

「じゃあ、どの広告もアフィリエイト広告にしちゃえばよくね?成功報酬ならたくさん出して、クリックされなくてもたくさん人目に触れさせるブランディング広告としても使えるんじゃね?」

 

そう考えると、そうなんです。物理的にはそれもできたりするんです。が、仲介会社のASPさんも黙っちゃいません。彼らはCPAで広告主が支払ったフィーによって生計を立てているので、CPA効果の低い広告は嫌がられます。

つまり、「全然この広告から効果出ないんだけど…」と媒体社からASPへ苦言がはいると、ASP側はその効果の薄い広告を中断、あるいは改善せざるを得なくなってしまいます。これは、広告収益を得ているメディア側も同じです。

 ※グーグルアドワーズでCPA広告を出す際は、直近1か月でコンバージョンが300だか30だか下限が設けられたりもしています。

 

4.課金のタイミングは様々

成果報酬とはいえ、複数の着地地点があります。例えば、人材系の会社さんを上げてみます。人材系企業はCVの着地地点として、「転職サービスへの登録」「面談の実施」「成約」等々があります。後ろに行くにしたがって難易度は当然上がるのですが、ASPはCVの難易度に応じてアフィリエイト広告の1CVあたりの価格を調整していきます。当然、難易度が高い方が報酬額も高いですね。

 

(例)

・ 100名の人がアフィリエイト媒体に出ている広告をクリック(課金なし)

・ 10名の人が転職サービスに登録(課金ポイント①)

・ 1名の人が面談(課金ポイント②)

 

この場合、当然①より②の方が難易度は高いです。その分価格は高いですが、数は少ないです。そのため、サービスや媒体の性質を見抜きながら、どこに課金地点を置くかという目を養うことがASPのコンサルタントとしては重要になってきます。

 

ちなみに。

1度アフィリエイト広告を踏むと(上記の場合、離脱した90名)、そのあと一定期間ユーザーは追われます。すなわち、アフィリエイト広告以外経由でCVしたとしても、一定期間の間はアフィリエイト広告経由でのCVであるとカウントされてしまうのです。従って、広告主からすると、アフィリエイト媒体を踏んだユーザーをいかに即CVできるかがポイントになりますね。CVは1人なのに、別媒体からの課金、アフィリエイト広告からの課金といった、ダブルカウントが起きてしまうので…。

 

5.リスティング運用担当とアフィリエイト広告担当のキャリア(番外編)

CPA広告の対概念、CPC広告でリスティング広告があります。性質的にはどちらも「刈り取り系広告」という認識なので、用途としてはそこまで大きく違いはないのかな、と思います。

 

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参照:ダブルファネルマーケティングの理論と実践/『ダブルファネルマーケティング』特別公開#2-1 | Web担当者Forum

 

それぞれは丸で囲った上記の位置ですね。認知から、購入へ。リスティング広告は特定のキーワードで検索する顕在的な見込み顧客を刈り取ります。アフィリエイト広告は特定の媒体に訪問した、広告主の広告に興味を持ちそうな見込み顧客を刈り取ります。

 

…ふと、ここでキャリアについて考えてみました。 

両者で行き来する場合ってどうなの??

 

 【パターン①】リスティング⇒アフィリエイト(領域が広がる??)

◎活かせる:

・ 媒体社に対する検索周りの集客アドバイス

・ 効果的なLP作り

◎新たに身につく:

・ 媒体、成果報酬広告の理解

・ ディスプレイ広告等のクリエイティブ

・ 流入からのCVへのコンテンツ編集力

 

【パターン②】アフィリエイト⇒リスティング(専門性がつく??)

◎活かせる

・ 媒体社の集客に対する知見・経験

◎新たに身に着く

・ 検索キーワードとユーザーの動向

 

どちらも活かせるものの前者の方は、経験を活かせる分野もあり、広がりはあるように思えます。後者の方は専門性は高まるものの、今までの経験が活かせるかは不明な部分が多そうですね。

大事なのは、どの専門性を突き詰めていきたいか、だと思います。幅広くキャリアを積んできた方は、おそらく30代、40代になって苦労される可能性があります。30代以降は、「専門性」×「マネジメント力」(×「英語力」)です。常に自分はどの領域で強みを発揮していきたいのかは考えておいた方がよさそうです。 

 

*1:アフィリエイトサービスプロバイダーの略。アフィリエイトのネットワークを持っている代理店さん

アドテクノロジーの主要プレーヤーと潮流

 

ここらへんで、「アドテクノロジー」の全体像をちょっとずつ噛み砕いていきます。

アドテクノロジー界 主要プレーヤー

主に4つのカテゴリーに分別できると思います。独断と偏見に基づいてピックアップ&大別してみました。後で詳しく説明するので、「4種類あるんだなぁ」ぐらいの認識で問題はないかと。点線より上は日系、下は外資系企業です。それぞれの機能は今までも書きましたが、要望があったり、気が向いたら、書きます。

 

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 出典:アド野テク蔵(2014年7月更新)

アドテクノロジーで何が変わった?

一言で言うと、広告主が広告の値段を付けられるようになりました。僕は「民主化」だと思っています。革命です。これまでのような、媒体社や広告会社主導で広告費が決められていた時代とは大きく異なってきました。

無形サービスの宿命ですが、価格なんてあってないようなものです。欲しがる人がいれば価格は吊り上がり、いなければ価格は下がります。広告枠の値段もそのような時代のうねりの中を生きてきました。それを牛耳る広告会社とメディア会社。いうなれば、彼らの独裁体制だったかもしれません。 もちろん、優良なプレミアムメディアの広告枠はいまだに高価格を維持される可能性はありますが、売れなくなった圧倒的多数のメディアに関しては、アドネットワークやアドエクスチェンジの中でオーディエンスデータとともに販売されます。

でもこれからは、枠の値段ではなく、枠の裏側にいる、メディアに訪問するユーザー一人ひとりに値段がつく時代です。広告会社ではなく、DSPSSPを介して行われるようになり広告の価格が設定されます。市場原理です。

自由化から独占の流れ

自由主義に基づく資本主義体制全体を見渡しても既得権益を守ろうと各プレーヤーが動きますから、Web広告業界でも市場原理で価格が決められるようになれば、利益を得よう、既得権益を守ろう、あわよくば独り占めしよう、という動きが出てくるのは当然のことでしょう。こうした流れの中、最も有利に動いているのはSupplier、メディアサイドです。海外は、大手メディアがエージェンシー機能を取り込むといった動きを始めています。広告会社を噛ませず、自社でアドテクノロジー、トレーディングデスクを保有することで、手数料のピンハネを防ぐのです。ただ、いきなりトレーディングデスクを自社で持つことは難しいので、エージェンシーから出向してもらい、デスクトレーダーを育成するようですね。    

進むプライベート化(=会員制)

プライベートエクスチェンジと呼ばれるようなものも出てきました。メディア側が指定した広告主しかエクスチェンジに入れないようにした仕組みのこと。所謂、会員制のバーみたいなもんですね。メディア側のブランディングを保ちながら(イケてない広告主を排除)、一定額以上の広告価格を保つためにできましたが、これもメディア側がいい想いをしようとするための取り組みです。  

 

データ、動画で価格押上げ。

現在のディスプレイ広告市場の成長を後押ししているのはオーディエンスデータと言われるような「データ」です。このデータを基に見込み客へピンポイントで広告配信ができることで単なる純広告よりも高い価値を付けることができ、広告の値段が引き上げられているのです。最近でもリクルートが後発ながらリクルートポイントを始めたましたね。Yahoo!等の大規模トラフィックを抱えるメディアや多数の会員を囲う(ツタヤや旅行会社等)企業がDMPというものを利用し始め、オンライン・オフラインの行動履歴や購買履歴を結び付けようという取り組みが進んでいます。

例えば。Aさんがリアル店舗で赤ちゃんの子供服を買い、ポイントカードを提示したとします。そのポイントカードの購買履歴がAさんのオンラインのデータに結び付けられ、Aさんがオンライン上を回遊していると、一眼レフカメラの広告(子供の写真を撮るのでは?というニーズ仮説)が出てきたり、幼児向け教育教材の広告(子供の教育も考えるのでは?というニーズ仮説)が出てくることがあります。プライバシーの問題と隣り合わせですが、個人的には、その人に合った「適切な」広告が出てくるってことならドンドン促進させればいいのにと思ってしまいますが(笑)  

 

そして現在の成長市場であるRTB取引市場が一般化するころには、やがてディスプレイ広告市場が鈍化します。PCのディスプレイ広告市場も世界的に見ると、これまでより成長速度は衰えています。テレビ広告も横ばいです。まぁテレビ広告に関しては時間枠が固定されているのだから、当たり前の流れでしょう。 このような背景から更なる収益化を、ということでメディアサイドは高付加価値広告商品の開発強化を進めます。そのひとつが、動画広告でしょう。ディスプレイ広告の枠に動画広告をぶち込んだとしても効果が見えないゆえリスクが大きいので、まずは動画コンテンツ(YouTube等)の上に動画広告を載せることが一般化してくるはずです。大手ニュースサイト、動画配信会社、あるいはテレビ局がコンテンツをネットへ流し始めることで、この市場は拡大するでしょう。  

 

広告主の反撃。第三者配信がもっともっと前に出てくるんじゃないかな

しかし、広告主側も負けてられません。溢れんばかりのアドネットワークや、効果が出るか怪しいプレミアムメディア、そしてまだまだ成功サンプルの少ない動画広告。本当に効果が出る広告施策を知るためには、効率よく広告効果の計測・配信を行わなくてはいけません。そのために、もっともっと第三者配信アドサーバー(第三者の目、手)を利用する広告主が徐々に表れるのではないかと考えています。メディア、広告会社、アドテクノロジー会社、複数のプレーヤーが美味しい話を添えて様々な選択肢を用意してくる中、どれが本当に効果があるのか、広告主が第三者を踏まえて考えてみる、そんなときに必要とされるのが第三者配信アドサーバーなんですよね。  

 

結局、アドテクってどっちの味方なの?

アドテクノロジーは広告価格設定の自由化、広告効果の透明化、配信の効率化等様々な夢を広告業界に持ち込んでくれました。でも結局、広告主・メディア側、どっちの味方なの?ってのはこれからアドテク業界に投げかけられる大きな命題だと思います。

それと、扱うのはどうしても数字ばかりになりがち。。古くからある広告会社はもしかすると、今よりも数字にはうるさくなく、もうちょい感覚的な部分の方が大きかったのではないかと思います。テクノロジーにはテクノロジーらしいいい部分もありますが、人だからこそできる「クリエイティブ」にももっとこだわれるような、もっともっとワクワクさせてくれるような話題があってもいいはずです。アドテクはその時々で長いものに巻かれるような、数字とワンセットの無機質なポジションからちょっとずつ脱却してほしいなんて思ってます。

 

参考になるサイト

アドテクノロジーを学ぶには、やっぱり本ではなくWebサイトの方がよいかと思います。スピードが速いんで、書籍化されてる間にトピックがおいてかれちゃう気がするんですよね。

 

僕がよく目にするのはここら辺です。

 

RTB SQUARE | RTB・自動広告取引の最前線情報サイト

アドテクノロジーの最先端情報を知るならここ。Twitterでも情報発信しているんで、速報性も高いですね。

 

MarkeZine(マーケジン)

業界人ならおそらく誰もが知るサイト。Webマーケティングの最新情報ならココ。

 

業界人間ベム

個人的に、一番更新が楽しみなサイト。事実ベースの情報のみならず、ベムさんの解釈を踏まえて情報を咀嚼できるので、より理解が深まります。

 

 

admarketech.

アタラ合同会社の岡田さんが書いてるblog。独自の深い考察と共にアドテクノロジー、webマーケティングを書き連ねてます。業界の最前線にいる方が書くだけあって、非常に勉強になります。

 

電通報

電通が配信する情報サイト。ユーザビリティもさることながら、各領域に著名人が寄稿しているだけあって、学びの多い内容が詰まってます。

 

ソーシャルメディア・Web広告に関する話題を提供するラボサイト | アド論

GMO Nikkoさんが提供する情報サイト。ソーシャルメディアを中心としたweb広告論が展開されていて、これまた面白い。

 

Web担当者Forum - 企業ホームページとネットマーケティングの実践情報サイト - SEO/SEM アクセス解析 CMS ユーザビリティなど

トランスコスモスさんが提供するサイト。web担当者がつまづくあたりを丁寧に解説。たまに漫画なんかがあってすごくわかりやすい。


こんな感じです!

第三者配信から見える日米のインターネット広告の違い

第三者配信(3PAS/スリーパス= 3rd party ad serverとも言われる)という存在が徐々に日本にも知られるようになりましたが、国内では10%程度とまだまだシェアは小さいようです。発祥の地アメリカでは利用率が90%以上とまで言われており、そもそも使わなきゃ勿体なくね?というプレゼンスを確立しているそうです。この違いは何なのでしょう。

日米で違いを考察してみました。

 

第三者配信は「計測・配信のプラットフォーム」

第三者配信とはその名の通り、第三者として広告を扱ってくれる存在。媒体社のアドサーバー(広告が配信されるトコ)ではなく、中立、第三者のアドサーバーを通じて広告を管理・配信しますよ、という仕組みのコト。広義ではアドネットワークも当てはまりますが、「第三者配信(3PAS)」と表現した場合、それとは別のモノを指します。

 

展開している事業者として日本で有名なのはこんなところでしょう。

Sizmec社 (Media Mind) ⇒ Sizmec

Fringe81社⇒Digitalice

Google社 ⇒ Double Click for Advertiser

 

予算額が多い広告主はキャンペーンに合わせて多くの代理店やアドネットワーク業者とやり取りをしますが、それに伴い、上がってくる広告効果のレポートも多くなります。実はこれが問題のひとつ。

例えば。合理的な購買欲求が高い主婦の方々を想像してくれればいいかもしれません。僕もたまにやったりしますが、1円でも安い商品を求めて複数のスーパー・デパートを回りながら比較購入しますよね?すると、レシートが多くなります。のちのち家計簿を付ける際、面倒になる。

 アドテク業界界隈もそれに似ているんです。

生じる問題は主に以下2つ。 

  1. 代理店ごとの複数レポートを見るのが手間(広告プロモーションはスピードが命!)
  2. コンバージョンのダブルカウント*1が発生してしまう(広告プロモーションは正確さが命!)

ということ。

第三者配信なら、これらを一括で解決できてしまうんです。

(1)は第三者配信が代理(第三者の立場)で各代理店・アドネットワーク各社から上がってくるレポートを統合的に計測することができるため、より正確なレポーティング業務を行うことができるようになります。(2)も同様で、第三者が代理で配信された広告を管理してくれるので、ダブルカウントは当然除かれますね。

 Web広告はスピード、正確性、小さなコストカットの積み重ねが大事です。

にもかかわらず、第三者配信が日本でそこまで流行っていないのはなぜなんでしょう。 

アメリカは土地柄・外部要因が大きい。

第三者配信の普及率が高いアメリカはカルチャー的に分断された国という土地柄な問題、それからエージェンシーに対する信頼性の問題が背景にあります。アメリカのエージェンシーから出るレポートは正しくない場合も度々あるようで、監査も入るそうです。

加えて、人種のるつぼと言われるアメリカは地理的に分断されており、その土地ごとに文化や特性があるため、キャンペーンが多様化します。それにより、当然複数の代理店、複数のアドネットワーク、DSPを利用することとなるため、広告管理に比較的負担が圧し掛かってくるようです。

 

従って、アメリカには中立的な立ち位置の第三者配信を「使わなくてはいけない」といった環境があるんですね。 

一方で。日本はインターネット広告の市場規模を見てもらえばわかりますが、まだまだWebでのキャンペーンがまだ成熟していません(その分伸びる余地もあるのですが)。未だに大手の専門サイトに広告を出していればリーチ数が出てくるから大丈夫!という心理があるみたいです。そもそも、日本のキャンペーン市場においてはTV広告の強さが圧倒的。アメリカと違って日本のTVは無料で、古くから日本の生活に根差しているため、影響力が未だに強いみたいなんですね。 

大手クライアント・大手エージェンシーが業界を開いていってほしい。

この業界を変えていくのは、○○億クラスの予算を持っている大手広告主、彼らのパートナーである大手代理店だと思っています。広告予算的に余裕がある場合と比べ、予算がない企業は革新的な取り組みに及び腰になる可能性が高いからです。

ただ、直近、国内でもアドネットワークが乱立しており、RTBといったプログラマティック広告も登場し始めており、広告の管理自体が多様化してきているのは事実だと思います。スピード、正確性を従事する広告プロモーション市場において、おのずと必要とされてくる日は近いのではないかと、希望的観測を持っていたりもします。

*1:例えば。ABCという複数の媒体を順番に飛んで1回コンバージョンをした場合、ABC社で複数のDSPやアドネットワークをまたいで広告キャンペーンをしていた場合、それぞれの業者から「1コンバージョン」のレポートが上がってきてしまう。それにより、コンバージョンが2以上にカウントされてしまうことがある。

「“拡”告」のキーワード「3.11」

検索は世界を救いますね。

 

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3.11、検索は応援になる。 - Yahoo!検索

 

感動しました。「3.11」と検索すると、Yahoo!Japanから10円が募金されるようです(1人1回とのこと)。検索なんて電車に乗りながらできます。オフィスワークのちょっとした合間にできます。1000万人が行えば、軽く1億円ですよ?

「インターネット広告=しつこい、追っかけ広告」というイメージを覆し、少しでも世の中の役に立つ、受け入れられる「広告」が出てくると嬉しいですね。

一人ひとりの手で広げていく広告、まさに「拡告」!

 

アドテクノロジーの歴史(5)【DSP、SSPの時代】

ここまでの歴史でアドテクノロジーのコアとなる部分は説明してきました。今回はWeb広告業界でBuzzってる、「DSP、SSP」についての解説です。

 

業界全体を“RTB”プラットフォームへ!!

今まで、RTBというとアドエクスチェンジ内でしか実現できませんでしたが、DSP、SSPの登場で世の中に出回っているアドネットワーク・アドエクスチェンジ全てをRTBのプラットフォームに乗せることができるようになりました。理論上は、存在するあらゆる広告枠、その裏側にいるオーディエンスに、リアルタイムで広告を配信することができちゃうようになりました。

 

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※ 図:DSPとSSPが構成するRTBプラットフォーム

 

ここで大事なのは、DSPとSSPは対になってるってことです。磁石のN極とS極、凸と凹、どっちかが欠けていたら上記のシステムは稼働しません。

ちなみに、DSPやSSPってのはなんとなく「凄そうなシステム」ということが分かっていただけたと思いますが、実際にそのシステムを作っている会社があります。例えば、DSPであればフリークアウトさんやマイクロアドさんが、SSPであれば、Kauli(カウリ)さんやジーニーさんが有名どころ。これらの会社さんがアドネットワーク会社やアドエクスチェンジの会社と「一緒に仕事しましょう!」と持ち掛けて、自社のDSP/SSPと接続するわけなんですが、どちらの会社にとっても、自分たちのプラットフォームで広告が売買されるので、大歓迎です。いわばWin-Winの関係になります。

で、そこの収益に関してはどうなってるかというと、前回のエントリーでオークション経由で広告が売買されるってのは説明したと思いますが、こうしたDSP/SSPの会社は自分たちのシステムを導入料金に加え、実際に広告を配信した際に手数料を取ることで成り立っています。なので、インターネット広告が出回れば出回るほど潤うんです。証券会社みたいなもんですね。

 DSPとリーマンショックの関係

日本で初めてDSPが登場したのはフリークアウトさんが開発した2011年と言われていますが、このテクノロジーも発祥はもともとアメリカでした。発明のきっかけは実は、リーマンショックと深い関係があるそうです。

2009年頃、サブプライムローンの問題が発端に世界中の金融機関を中心にダメージが広まったリーマンショックですが、この当時、金融機関に在籍していたエンジニアが職を求めてインターネット広告会社に移っていったことがDSPの開発につながったと言われています。DSPもストックマーケットの仕組みに近い部分があることからお気づきのように、金融工学に長けたエンジニアがインターネット広告にその理論を応用し、広告のオークションシステムを作り上げてしまったのでした。

 

DSPとSSPの役割分担

こんな歴史的背景が紐づいているアドテクですが、それぞれがどんな役割を果たしているんでしょう?以下に記載してみました。 

 

DSP(Demand-Side-Platform)は広告主の味方

【目的】広告主の広告効果を最大限にすること

⓪たくさんのネットワークとつながる

①世の中一般のwebサイト訪問者を様々なセグメントにカテゴライズする

②そのカテゴリーに応じて広告主にオークションをかけさせる

③広告配信をする

④広告配信結果を分析する

⑤分析結果を広告主へレポートする

⑥広告主の目標達成のため、改善プランを提案する

 

SSP(Supply-Side-Platform)は媒体社の味方

【目的】媒体社の収益を最大化すること

⓪たくさんのネットワークとつながる

①提携先のサイトに来たお目当てのユーザーを判断する

②お目当てユーザーの来訪をDSP側へ知らせる

③媒体に勝者の広告主の広告を掲載する

④媒体社側へレポーティング

 

訪問者のカテゴリー分け?

ところで、Webサイト訪問者(オーディエンス)の「カテゴリー分け」の話が出てきて、ふと思われた方もいるかもしれませんが、いつどこでどうやってこのようなカテゴリーが形成されているのか?という疑問が湧いてきますよね。

実は、日々この瞬間にも作られ続けています。僕らがWebサイトを見る際、Internet ExploreやGoogle Chrome、Safari等のブラウザを利用すると思いますが、これらブラウザでWebサイトにアクセスするごとにクッキー(cookie)が付与されます(Safariは制限があるようですが)。“クッキー”は、アノ食べるクッキーです。パンくずを道しるべにちぎって落とす、なんて昔話に出てくるような古典的な方法がありますが、それのクッキー版です。僕らはWeb上で通った道にクッキーを置いてきているのです(現実的にはクッキーが「付与される」のですが)。

そのクッキーを辿ることによって、僕らユーザーが過去にどんなサイトをどのくらいの期間に何回訪問して、どのくらいの時間閲覧していたかってことが分かるんです。

これはWebサイト上の履歴でしたが、実はオフライン、リアルの履歴も追われています。何かというと、Tポイントカード等の登録データや購買履歴です。このあたりのオフラインデータをオンラインデータと結びつけ、インターネット広告配信用のデータにされるのです(DMPの章で解説します)。

これら無数の訪問者のデータをオンライン・オフラインの購買データと結びつけて、どんなタイプ(行動履歴)の人はどんなモノを購入する傾向にあるのかというサンプルをたくさん作り、それらタイプに近しい人々をまとめます。その作業がインターネット広告配信で使われるカテゴリーになるわけです(とあるDMPは180種類のカテゴリーがあるとか!)。ちなみに、DSPやSSP事業者はこんな感じのデータをまとめてます。

 

【付録】図でわかる RTB!~DSP/SSPを活用したRTBってどーなってんの??~

 STEP1.

カテゴライズされたお目当て訪問者を認識

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STEP2.

各DSPで天下オークション一武闘会を実施

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STEP3.

勝者広告主の最終決戦。勝者が支払い。

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STEP4.

勝者DSPがSSPへリクエスト。勝者DSPに手数料が入る。

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STEP5.

SSPが媒体社に勝者の広告を配信。SSPと媒体社に手数料が入る。

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おしまい。

 

こんな感じのオークションが日本各地で、はたまた世界各地で行われているわけです。まぁお気づきの方もいるかと思いますが、結局予算力がある広告主が強いんじゃん!って話になりえます。ぶっちゃけそうかもしれません。実際、今DSPを使っている広告主さんというのは大手企業さんがメインですから。。。

とはいえ、広告はRTBだけではないので、限られた予算内にどれだけ高い効果が出せるか、というのが広告主側、代理店側のマーケターに求められるスキルですね。

 

スマートフォン広告市場

 

スマホ広告市場、数カ月にいっぺん、成長率が発表されてますね(参考資料)。

今年はついに2000億円突破するとか。

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ちなみに、2000億円っていうと、日本の年間映画興行収入並みの市場(このところ落ちてきて、1800億とか言われてますが…)。

 

スマートフォン広告と聞くと「たかがちっさいデバイスの中の広告だろ」と思いきや、実はPCではなかなかできないような面白い施策ができるんですよね。

PCと圧倒的に違うのは「場所」が伴うこと。検索連動広告でも、PCに比べて持ち歩けるスマホの方は「土地名」のキーワードへ入稿することが多いのだとか。それと気になるのは、O2O領域におけるリアルアフィリエイト。店舗への集客を促すためにスマホアプリを使ったり、Webサイト上での広告を使ったり…まだまだ面白そうなことがたくさんできそうです。

この辺りはまた色々調べられ次第、アウトプットしていきます。