セオ部(SEO部)

アドテク、キャリアは他の人に任せて、SEOトピックと持論を語ることにします(小学生、業界人向け)。

アドテクノロジーの歴史(4)【アドエクスチェンジの時代】

アドネットワークの時代の次は、アドエクスチェンジの時代(2010年頃~?)です。アドネットワークの時代から大分月日は立ちますが、その間はSEOやリスティング広告、フィーチャーフォン(ガラケー)での広告が盛り上がってきてました。とはいえ、その点はアドテクノロジーの歴史的には直接関連性は薄いので「番外編」で記載するとして、まずはアドエクスチェンジを説明していきます。

 

株ならぬ、広告枠の入札システム!

アドエクスチェンジについてWebで辞書的な意味を調べてみると、その不親切感極まりないことが痛感されますw(もちろん、分かる人にわかるので良いと思いますが)。

アドエクスチェンジとは、オンライン広告のうち、特定の広告枠におけるインプレッションを入札方式によって売買する方式のことである。

出典:アドエクスチェンジとは 「広告枠取引, アドマーケットプレース」 (Ad Exchange): - IT用語辞典バイナリ

 

要は、株の入札システムの広告枠バージョン。もうなんていうか、もう、オークションみたいなもんです。

買いたい広告枠を今までのようにメディアレップやアドネットワーク企業が囲い込むのではなく、広告枠を売りたい人、買いたい人がいつでも自由に取引できるようにしようぜ、というある意味「民主的」な制度なんです。値段もオークションが基本なので、売り手に値段を決められるコトもありません。

アドエクスチェンジ企業で有名どころとしてはGoogleの「Double Click Ad Exchange」(Googleが2009年にDouble Click社を買収)やcciが運営している「OPEN X」でしょうか。

 下の図に、アドエクスチェンジとやらの広告枠入札プラットフォーム(マーケットプレイス)の仕組みを記載してみました。

 

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 【図1:アドエクスチェンジの概念図】

 

アドエクスチェンジのイメージとしては、複数のWebサイトやアドネットワークを繋ぎ合わせた広告ネットワーク。Webサイト、アドネットワークを横断的に広告が配信できるようになりました。

アドネットワークとアドエクスチェンジの違い

アドネットワークはカテゴリー分けされた「Webサイト」ネットワーク全体へ広告配信を行うものでしたが、アドエクスチェンジは広告ネットワークの属性はどうでもよく、「広告枠(もっというと、その裏側にいる「人」)」へ配信する仕組みです。

こうした配信手法が可能になったのは、「ターゲティング広告(2005年頃登場)」の技術が発展したからですが、この辺りの歴史は今でも影のある領域なので、また近いうちに書きます。

また、課金方法も以前の広告のように「クリック課金」や「成功報酬課金」ではなく、インプレッション*1単位で課金されるようになったのが1つの大きな変化でしょう。これは例えば、「○×属性の人に1000インプレッション(1000回の広告表示)を△□円で買う」って入札方法ができちゃうわけです。つまりは、アドネットワークでネットワークに対する課金だったものが、アドエクスチェンジでは広告枠1つに対する課金になったってことです。

でもアドエクスチェンジで広告を入札する際、1つの広告枠に複数の広告主が殺到する、なんてことも考えられますよね。その場合、その広告枠に最も高い値段を付けた広告主へ広告が配信されるオークションの仕組み(RTB※Real-Time-Bidding)が開発され、使われるようになりました。下に色々書きましたが、これはホント、スゴイ技術です。 

インターネット広告業界 民主化の兆し?

アドエクスチェンジの発展は、個人的に広告業界で「民主化(政治的な意味はありません)」が起こったのだと捉えています。というのも、広告枠の値段を媒体社側や代理店側が決めるのではなく、広告主が決められるようになったからです(ここは次回アドテクノロジーの歴史(5)でもうちょい詳しく書きます)。

 

アドエクスチェンジの歴史

アドエクスチェンジは2009年頃アメリカでDouble Click社が営業をスタートしたのを皮切りに、日本では2011年頃、本格的に登場しました(参照:グーグル、入札方式で広告を売買する「アドエクスチェンジ」を日本でも開始 -INTERNET Watch)。

なぜこうしたトレンドが出たのか、背景としてある理由をざーっくりお伝えすると「Webサイトの数がハンパなくなってきたから」です。

1998年にアドネットワークが日本でもちょっとずつ出てきましたが、2005年以降ターゲティング広告が利用されるようになった頃に徐々に流行ってきたと考えています(ターゲティング広告の歴史はまた番外編で)。が、その普及とともに、広告主、媒体社ともに問題が発生し始めました。

 

 広告主さん A:「アドネットワークやら色々な種類のWebサイトを試したけど、結局どこのサイトに広告出せばいいのか分からなくなっちゃったよ」

広告主さんB:「イイ値段でアドネットワークに出稿してみたけど、リーチは広がったものの、実際に見てほしい人に見られてる感が無いなぁ。」

媒体社さんA:「他社Webサイトが増えすぎて、このところウチの広告枠が余っちゃう。収益化したいのになぁ」

媒体社さんB:「アドネットワークに広告枠出してるけど、ウチの枠はもっと高い値段で売れてもいいはずなのに」 

 広告主からは「実際たくさんの人に見てもらったっぽいけど、ホントに効果高まったんだっけ?」という問題が、媒体社は「広告枠の余りを売りたい」「アドネットワーク会社に値段を決められたくない」という問題が発生したのでした。

これらの問題を解決するのが2005年頃に登場した「(オーディエンス)ターゲティング広告」の技術+アドエクスチェンジで可能になった「RTB*2」です。

 

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【図2:RTBのイメージ図】

たとえ媒体社側の「余った」広告枠であっても、そこに訪問するユーザーが広告主がターゲットとしている属性ユーザーなら「その枠、喜んで買います!」ってなるわけです。この仕組みによって、アドネットワークを利用していた広告主から出ていた「ホントに効果あるのかよ(ホントにターゲットに見られてんのかよ)」という不満は解消されるようになります。

 同時に、DSPやSSP(アドテクノロジーの歴史(5)で詳述)が丁度2011年に日本へ参入し始め、アドエクスチェンジが全力で普及し始めるのでした。

 

まとめ。

新しい言葉が登場して紛らわしい領域なので、以下まとめ。

1)サイトの増加に伴う広告枠在庫の増加によって新たな広告技術が求められる。

2)アドエクスチェンジの登場により、余剰広告枠の処理が可能になる

3)既に普及していたオーディエンスターゲティングの技術と新登場したRTBの技術で広告主からの利用が増える

4)広告主はオークションで価格を自分たちで決められ、媒体社は余った余剰広告枠在庫の収益化が可能に(インプレッション課金)

 

 

続く!

*1:広告が一人のユーザーに表示された単位。1に1回表示されれば「1インプレッション」

*2:リアルタイムでの広告枠のオークション売買の技術

アドテクノロジーの歴史(番外編)【図で分かる!Google先生のサービス】

困った時に頼りになる「Google先生」。

どんなときもタダで欲しい情報をくれますが、実は広告収益が95%以上を占めています。今日は普段目に触れないであろうgoogleの広告サービスについてです。

 

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(http://www.google.co.jp/about/company/products/)

 

アドワーズとアドセンス、ディスプレイネットワーク

googleの主力商品はGoogle Adwords(アドワーズ)、Google Adsense(アドセンス)、そしてGoogle Display Network(GDN)と呼ばれるもの。企業の規模問わず、広告主、媒体社、広告代理店へそれぞれ提供していきながら、Web広告業界の基礎を作ってきたといっても過言ではないでしょう。サービス名からはなんとなくしかイメージできないと思うので、図を使って解説していきます。

 

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【図1:Googleサービス概念図】

個人的な解釈も交えつつ図にすると、こんな感じですかね。

左側が広告を出稿したいという広告主、右側が広告で収益を上げたい、という媒体社及びブログ等を運営している個人ユーザーです(代理店は紛らわしいので割愛します)。赤く囲ってある部分がGoogleのサービス。そのあたりを下で順番に説明していきます。

 

 ①アドワーズ(広告主向けサービス)

広告主が広告を出したい、となった時に利用するのがアドワーズです。収益はクリック課金がメイン。

Ad「Words」だけに「言葉」「キーワード」に関連する広告商品と捉えて頂くと良いでしょう。上図、広告主から右横下にある白抜きボックスは「広告主の要望」を表しています。「人」や「コンテンツ」に対して広告を出したいという時、それと、「検索キーワード」を狙って広告を出したい時というように大別しました。このアドワーズの場合は、ユーザーの「検索キーワード」を狙って広告を出稿したい際に活用します。

広告の形は「テキスト広告」がメインですが、「イメージ画像」「動画」も利用可能です。

ピンと来る方は検索結果の右横等に表示される「リスティング広告」を思い浮かべるかもしれませんが、実は「リスティング広告」はアドワーズの広告出稿先のひとつでしかないんです。出稿先ケースは以下の「Google検索結果(これが所謂リスティング広告)」だけでなく、Googleが運営している「google map」や「You Tube検索結果」等があります。基本、「検索機能」が付いているgoogle系サイトはアドワーズで広告出稿が可能です。

 

 【A】 Google検索結果(所謂「リスティング広告」のこと)

リスティング広告は、下の画像で赤線で囲ってある部分に掲載されているテキスト広告のこと。

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【B】Google map

Googleのメイン画面にある検索エンジンからのキーワード検索だけでなく、googleマップでの検索でもアドワーズ広告は出稿されます。

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【C】 You Tube(googleが2006年に買収)

You TubeってGoogleだったの??って方もいるかもしれませんが、もともとは違う会社だったものの、2006年に買収されています。3年後、2009年に「YouTubeプロモート」名前で検索連動のサービスをリリースしており、アドワーズから出稿・入札ができます。

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他の細かい機能は後述します。 

②アドセンス(媒体社向けサービス)

 媒体社が積極的に「広告を使って収益を上げたいんだけど、どしたらいい!?」という際に利用するサービス。間違える方が多いのですが、コッチは広告主が利用するものではありません。イメージ、アフィリエイトサービス(成功報酬型広告サービス)に近いです。ブログをやっている方はイメージできるかもしれませんね。ただ、アフィリエイトサービスプロバイダー(ASP)のサービスと異なる点として、基本的な収益モデルはクリック課金なんです。もちろん、自社サイトに掲載した広告経由で広告主が求めるゴール(商品購入や資料請求等、所謂コンバージョン)が行われた場合に一定の額が収益として入るケースもあるようです。

このアドセンスを利用した媒体社が運営しているWebサイト(ブログ含む)はGDNの広告ネットワークへ自動的に追加され、GDNを利用する広告主がコンテンツ連動型やターゲティング等で広告を配信します【図1 参照】。ちなみにアドセンスはブログが流行り出した際に急速に普及し、GDNの参画Webサイト数も急激に伸ばしています。

「広告配信の方法」についてはGDN説明の際に記載します。

 

③グーグルディスプレイネットワーク(GDN)

これはアドネットワークの一種。Googleのパートナーサイト(Googleの広告掲載を許可したサイト)、あるいはGoogleの広告サービス(アドセンス等)を利用している媒体社が参画してます。

説明の際は広告主の観点から話した方がイメージが湧くと思うので、広告主目線で説明していきます。ちなみにGDNってのは、厳密には「アドワーズ広告」を掲載する先でもあるのですが、ほぼ「人」に向けるか「コンテンツ(Webサイトの中身)」に向けて打つかに分けるので、【図1】ではアドワーズ(検索キーワード軸での配信)と分けて記載しております。

アドネットワークについては以前説明済みですが、広告主からすると数百万のWebサイトへ一気に広告が打てるので、ひじょーに有り難いサービス(国内インターネットユーザーリーチ数は約83%)なんですね。

主な広告メニュー(配信手法)は以下5つですが、わかりやすく大きく分けると広告メニューは「To 人」「To コンテンツ」の2つに大別されると考えています。

  

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【図2:GDN概念図】

 

【A】プレースメント(To コンテンツ)

広告を出したいサイトへ指定、決め打ちで配信します。名指しで「○○サイトに出す!」って勢いなので、そのサイトの広告枠を買う、純広告に近いスタイルです。

やや広めでYouTubeにのみ配信、あるいは「○×.com」というサイトのみに配信、というピンポイントレベルでの出稿も可能です。

【B】トピックターゲット(To コンテンツ)

既に用意されたカテゴリー(ニュース、化粧品、食品...etc.)を選んで複数サイトへ広告配信するもの。例えば、ビジネスマンを狙いたい!って話であれば、例えば「ニュースサイト」を複数囲っているニュースサイトカテゴリーのネットワークに一括広告配信ができちゃいます。ピンポイントでWebサイト、コンテンツを選ぶわけではないので、プレースメントよりは決め打ち感弱めですね。これから新たにプロモーションを始めるぞ、というスタートダッシュにおすすめです。

【C】コンテンツターゲット(To コンテンツ)

広告主サイトに関するキーワードを登録し、そのキーワードと合致する内容が含まれているサイトへ広告配信を行います。トピックターゲットでカテゴリーの選択肢が無いニッチな業界や、トピックターゲットに出稿すると予算がかかりすぎて実施に移せないって場合に利用します。

例えば「靴下」のみをサイト上で売りたいとき。トピックターゲットで「衣服」のトピックに出稿すると「靴下」以外の衣服ニーズがあるユーザーへも広くリーチを伸ばすことができます。が。「そんな予算に余裕がない!」という場合は、コンテンツターゲットで「靴下」をキーワード登録し、広告配信先のサイト内容が「靴下」というワードに関連する場合だけ広告表示する、という手が打てちゃうんです。

【D】リマーケティング(To 人)

通称「リターゲティング広告」と呼ばれているもの。一度広告主のサイトに来たことがあるユーザーを狙うので、再度訪問してくれる可能性がある程度高い広告メニューですね。ピンポイントで「この人(ユーザー)に出す!」という決め打ち度の高い広告。

 【E】インタレストカテゴリ(To 人)

リターゲティングとはちょこっと違って、広告主のサイトを訪問したことはないかもしれないけど、ターゲットに近い行動履歴のあるユーザーを狙う広告配信スタイル。例えば広告主が車を売っている企業さんだった場合、車を買う可能性がある人は「車のサイトを見ている」という仮説は一つ立てられますよね。そこで、「過去に車のサイトに訪問している人!」という属性のユーザーに対して広告を打つことができてしまいます。詳細はどこかで述べられればと思いますが、Cookieという、webサイトに訪問した際に発行されるモノ(閲覧履歴みたいなもの)をもとにユーザーを絞ることができるんです。

Double Click AdExchangeはその他アドテクノロジーの説明が必要かと思うので、他の記事が更新できた後に説明します。

 

こんな感じで図を使いながらざっくり解説しましたが、「違くね?」って話があれば、いつでもアドテクノロジー研究所(仮)へお知らせくださいませ! 

 

ボーダレスなアドネットワーク企業

アドネットワークは国内でも10以上種類があるのですが、外資系アドネットワークはリーチ率(ユーザーに広告が届く範囲)がハンパないみたいですね。先日書いたインモビの記事に引き続き、今年2月5日発表のアドバタイジングドットコムジャパンのプレスリリースは衝撃的でした。

 

同社アドネットワーク内で広告に接触可能なユニークユーザー数が7,000万人を超え、日本国内でのインターネットユーザーへの広告到達率(リーチ率)が95%に達したことを発表しました。

 出典:プレスリリース | Advertising.com Japan

 

インターネット人口95%の数字

95%…という数字がいかに驚異的かは、下記に掲載したマイクロアドのサイトから拝借した表をご覧になれば明らかかと(出典はComScore)。2012年発表のものなんで1年ちょい経っているとはいえ、国内トップのGoogle Display Network(通称GDN)のリーチ率記録93.0%を2.0%上回る形で発表されてますのはすごい。

 

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国内アドネットワーク(以下;アドネ)も早い段階から運用が開始されていたにもかかわらず、日系より外資系のアドネの方がリーチ率が高いのはナゼなんですかね。そもそも95%ということですが…もはや残りの5%がどこのゾーンかスゲー気になります(笑)

情報通信白書 for Kidsってサイトによると、国内インターネットユーザーは「平成24年末(※2012年末)には9,652万人いたよ」って話なんで今9,700万人以上だと仮定しても、少なくとも9,215万人には接触できるってことになりますね。すげぇ。となると残り5%は500万人。イメージとしては、福岡県の人口分まるまるですね(東京ドーム約100個分の人口)。

単純に「リーチ数=囲っているメディア数」ではないので、おそらく国内に一定数いる外国語利用者をつかめているかどうかってのもポイントなんでしょうか。ただ、在日外国籍の方は2010年現在で約200万人強(参考サイト)なので、それは軽く超えてますよね。う~ん、ますます謎です。。

 

 

戦略的な話をすると、メディアを押さえるのは大きいです。90年段半ばに電博がメディアレップを押さえこもうとした戦略に表れていますが、アドテクノロジーを活用する場合にアドネやアドエクスチェンジは避けては通れませんので。

とはいえ、日本勢も黙っちゃいません。マイクロアドが頼もしい発言をしてくれてます。

現在はPCとスマホがメインですが、デジタルサイネージなどの新しいメディアにも広告配信を行っていくことがテーマの1つです。面を増やしていく活動です。また、2014年は弊社が提供するサービスを東南アジアの主要国全てに対応できるようにしたいですね。

 ASEAN版、広告テクノロジー業界マップ2014 (ディスプレイ広告)&東南アジア市場トレンド:株式会社マイクロアド 渡辺氏インタビュー | Exchangewire Japan

 興味深い記事なので、ぜひこちらもご覧くださいませ。日系アドテクベンダーの海外展開に関する話は今後も注目です。 

アドテクノロジーの歴史(3)【アドネットワーク時代(前半)】

 前回は純広告の話をしたので、今回は90年代後半のアドネットワークの話を。

90年代当初はまだまだWebサイトの数時代が少なかったってことから、「広告代理店~メディアレップ」のやり取りで全然まかなえちゃっていました。が、PCが普及し始め、法人企業もWebページが営業無くてはならないツールとなってきた頃、Webサイト数が急激に増えるようになります。さらにFCブログやアメーバブログのようなCSM(Contents Management System※ブログみたいなモノ)が世に出てくることにより、法人企業のみならず、一般PCユーザーもWebサイトを持つような時代にへと移り変わっていき、この流れがWebサイトの増加スピードに拍車をかけます。

「Webサイトが増える=広告枠も増える」って構図ですから、そろそろ今までのような手作業の純広告では 限界が見えてきます。

そこで登場したのが「アドネットワーク」です。

 

まとめ買いのアドネットワーク

 アドネットワークは目に見えるモノではなく、システムの話です。アドネットワークを作って運営してます、っていう専属の企業もありますが、媒体社に近いメディアレップが開発していたりします。日本にはPCだけで10数種類、スマホも合わせると20種類近くあるみたいですね。

で、アドネットワークは何かというと。

名前の通り、「広告(枠)をネットワーク化」したものです。

 

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(アドネットワーク概念図)

 

アドネットワークが日本で初めて登場したのは、1998年。cciとDACそれぞれが開発した「Adjust」や「DACチャンネル(今のimpAct)」が始まりでしょう。当時、広告会社からは「もっと管理しやすくしたいよね」というニーズがあり、広告主からは「もっとターゲットに沿った広告を打ちたい」ってニーズがあり、さらに媒体社からは「売れない広告枠をどうにかしたい」というニーズがありました。ココにWebサイトが増え続けている背景が相まって、「じゃあカテゴリーごとにWebサイトをまとめて、バルクで売っちゃうか!」 なんていう流れになっていったわけです。

例えば化粧品関係のサイト、自動車関係、金融関係、ニュース関連…etc.と様々なカテゴリーごとにWebサイトを分け、広告枠をパッケージングするのですが、このような集まり(広告枠のネットワーク)をアドネットワークと言います。

 

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(引用:http://opiedawn.blogspot.jp/2011/02/valentine-cards-goodie-bags.html

 

化粧品サイトなら「20代の女性で、OLが多い」とか、金融関係なら「男性で、高所得者層」などという、訪問ユーザーの属性が大体見えてくるわけですから、広告主の訴求ターゲットもそれら属性に合致しているのであれば、有象無象に集まる大規模サイトよりも、このようにパッケージングされた枠に広告を配信した方が圧倒的に効果があると判断されるわけです。

また、パッケージ化されているわけなので、同じアドネットワークに参加したサイトが販売される場合、枠は一律同じ値段です。従って、ネットワークで販売する広告枠は、純広告で「売りづらい」枠に限定されます。仮に大規模サイト(大手ニュースサイト等)で、誰もが確実に目にするようなトップ広告枠をアドネットワークで販売なんてことをしたら、もともと高値で売れた純広告で販売するよりも「安く」なってしまうことがありますからね。なので、Webサイト内にある複数の広告枠の中でも、あまり値段がつかない(≒人目にあまりつかない)ようなサイトをアドネットワークで販売する傾向があります。

加えて、季節ごとに媒体社(サイト運営者)のインベントリー(広告枠の在庫)に変化があります。12月等の年末年始は消費者の購買意欲が高まりますから広告出稿したいという企業が増えることで媒体社のインベントリーは減り、1枠あたりの単価が上がります。一方で9月などの閑散期には広告出稿が芳しくないので、広告枠が売れず、アドネットワークに入れ込む媒体社も多くなるのです。

 

こうして、アドネットワークの登場により、広告主にとっては、狙いたいターゲットと近い層に対して幅広くリーチでき、媒体社にとっては、普通にしてたら売れない広告枠をアドネットワークを使うことで収益の機会が得られるようになったってワケです。広告主も媒体社も(間にいるアドネットワーク業者も)Win-Win(-Win)になるという、そんな話でした。

※アドネットワークに関するもう少し深い話はまたいつか記載します(完成後、リンク貼ります)。

 

このエントリーを書いてて、アドネットワークの歴史を改めて色々調べてみたのですが、リスティング広告よりアドネットワークの方が歴史は深かったってのは個人的に一つの驚きです。もっと新しいものかと思ってました。ちなみにリスティング広告は2002年にGoogleがGoogle Adwordsの営業をスタートしたのが始まり(Google日本法人は2001年に設立※過去エントリー参照)らしいですね。

 

では。

InMobiの快進撃がスゴめ

モバイルアドネットワーク(アドネットワークのプチ解説はこの記事で)の世界大手InMobiが快進撃を繰り広げてますね。

 

 

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ソフトバンクが2億ドル出資したモバイル広告のInMobi、対話的ビデオ広告のプラットフォームをローンチ | TechCrunch Japan

 

インド人もビックリなモバイルアドネットワーク企業!

インモビは2007年にインドで誕生した企業です。モバイル広告でアジアNo.1のシェアを獲得し(ていると言われており)、今日では世界 165カ国、6億9,100万のユーザーに月間934億以上のインプレッション(*1)数を配信する広告ネットワークだそうです。※日本へは2010年夏に本格参入しています。

日本でアドネットワークがハヤり出したは実際2009年くらい(サイバーエージェントは2006年にアドネットワークをスタートしていて、国内アドネットワーク大手のマイクロアドは2007年に設立されてます)だと思っていますが、当時はPCがメインなので、おそらくモバイルのアドネットワークが話題になりだしたのは2011~12年くらいではないでしょうか。

となると、インドで2007年に既にモバイルアドネットワークを立ち上げてるってのは地理的にもタイミング的にも不思議で、個人的には物凄く興味のある会社さんです。

2014年に入ってモバイル広告代理店大手のアドウェイズとも提携しており、国内においては2017年にはRTB*2市場において、モバイル市場がPCを超えるくらいの勢いで成長しているってことなので、国内での有力パートナーをいち早く囲ったのは大きいでしょう。

 

バナーはもう古い??

上記ニュースサイトの中で、InMobiのCEOがこんなことを言ってますね。

InMobiのCEO、Naveen Tewariは私の取材に対して、「向こう半年から1年の間にわれわれの既存の広告主の30-40%は新しいプラットフォームに移ると考えている。InMobiの売上の少なくとも25%は近くビデオ広告にシフトするはずだ。

動画広告は「今年は来る」「いや、今年こそは来る!」と叫ばれているものの、なかなか大きなウェーブが来ないんで、ホントは来ないんじゃないか?(オオカミ少年か?)みたいな広告主さんもいると思います(笑)そんな中の上記発言は物凄い挑戦的で、こんな調子で思いっきり主張してくれる企業さんがもっと増えてくれれば嬉しいのになぁ~なんてことを考えています。

動画広告が広まらない要因の一つに、媒体社側が技術的に追いついていない(動画広告用の広告枠が作れてない)って問題もあるので、こうしたベンダーさんが啓蒙活動をするとともに、テストを重ねながら「ね?テレビよりコスパいいでしょ?」と世に知らしめて欲しいものです。

今年こそは、動画広告に大注目です。

 

*1:どれだけ媒体に広告が表示されたか。パッと1人のユーザーに1回広告表示されることを1インプレッションという

*2:Real-Time-Biddingの略。平たく言うと、広告主のWeb広告をオークションにかける配信手法のこと

アドテクノロジーの歴史(2)【純広告の時代】

今回から広告の仕組みに入ります。

インターネット広告史で最初の広告は「純広告」というもの。サイトに行くとよく見る四角いバナー広告がそのひとつです。純じゃない広告って一体どんだけあるの?ってなりますが、ピュアな広告、「純広告」ってのがあるようです。

 

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(引用:http://www.makemyownsite.com/loc_ms/step6_advertisement.html

 

固く定義付けをすると、こんな感じになるみたいですね。

広告の形態の一つで、広告主が媒体の広告枠を買い取り、広告主側で制作された広告を掲載するもの。「広告主側」には広告主自身のほか、広告主側の広告代理店や下請けの広告制作会社などを含む。

 

 (引用:純広告とは 【 pure advertisement 】 〔 純広 〕 - 意味/解説/説明/定義 : IT用語辞典

 

純広告の仕組み

広告業界を理解する上で必要なプレーヤーは「広告主(広告を出したい企業)」と「媒体社(広告を掲載したい企業)」、それから「広告代理店」の3社。代理店機能というより、今回はよりシステムの部分が焦点になってくるので、“Server”という表記を使って簡単に図にしてみました。 

 

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我々がWebサイトを見るとき、「ブラウザ(Internet Explore、safari、firefox等)」という窓を通してサイトを見ます。ブラウザからhttpで記載された信号を“Contents Server”という、所謂webサイトがストックされているトコへ送り、跳ね返ってきた暗号をブラウザが読解し、ユーザーに理解しすい形で表示します。

 

90年代は、Webサイトを見る際にContents Serverのみを通していました。それだけですと、コンテンツに加えてインターネット広告も同じ信号に乗っかってきます。すなわち、「コンテンツ+広告」というワンセットがユーザーに表示されることになり、「A」というページを誰が見た場合も、同じ広告が表示されます。

これが一般的に純広告と呼ばれるものです。トラフィック(ユーザー数)を集めているWebサイトに広告を掲載すれば、幅広いユーザーに対して一律「認知効果」を与えられるメリットがあります。今はPV(*1)が少ない媒体では効果が薄いためほぼ実施されておらず、莫大なユーザー数が集まる有名サイトに対して実施されているようです。その際には広告代理店が広告主との交渉を、上述したメディアレップが媒体社との交渉へと入ります。

ちなみに純広告の広告出稿は大変みたいで、サイトごとにクリエイティブ(バナー広告のデザインや表記)やサイズの規制、タイミング、価格交渉なんかが異なるため、間に挟まれた代理店やメディアレップは何度も何度も広告主~媒体社間の連絡をやり取りして…ってことがあったようです。

 

アレ…?出てる広告違くね?

ところが。

試しに今僕らがyahooのwebサイトへ訪問してみると、見る人によって掲載される広告が異なる、なんていう不思議なことが起こってます。

「さっき見てたサイトの広告が出てる」「わ。この本の広告、さっきAmazonで買おうとしたヤツだ」

今日ではインターネット広告だけ“Ad Server”という別のサーバーを通してユーザーへ発信されているため、実は一人ひとり異なった広告が打てるようになっているのです。

図にするとこんな感じですかね。

 

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Webサイトのコンテンツは"Contents Server"で、Web広告は"Ad Server"で配信する。コンテンツと広告のServerを分けることで、近年では、見る人によって広告が異なる「ターゲティング広告」という広告手法が新たに確立されるようになりました。

次回はそのあたりの話を。

*1:ページビュー:1ページ単位でサイトが見られた「回数」

アドテクノロジーの歴史(1)【1994年以降のWEB広告史】

昨今、東アジアの政治情勢がよろしくないですね。日本、中国、韓国、そしてアメリカ間での領土、慰安婦問題など。これらの関係性は「今」という視点から眺めるのはもちろん重要ですが、歴史を振り返らなくては見えてこないものがたくさんあります。

同様にインターネット広告の「今」も歴史を振り返ることで、より立体的に見えてくるモノってのがあるんじゃないかなーって思ってます。

 

100人中、78人がクリック!?

世界で最初に登場したインターネット広告として語り継がれているのは、米国の通信会社AT&Tが1994年にHot Wired.comに掲載したバナー広告(図-1)。

今日ではクリック率が「0.1%」あれば「良い方」ではあるようですが、当時はクリック率78%という目を疑うような数字が叩き出されていたようです。

 

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(図-1)引用:http://www.gizmodo.jp/2013/02/post_11672.html

「ここでマウスクリックしたことある?」なんて言われたらインターネットの世界すら真新しかった人々にとってはクリックしたくなりますよね(笑)

こんな感じで始まった現代のインターネット広告ですが、どんな感じで日本に浸透していったか、これからざーっくりお話しします。

 

インターネットが出たころのWeb広告ってどんなん?

アメリカのインターネット広告より日本は3年遅れていると言われていますが、日本でインターネットが一般家庭に使われるようになったのは、Windows95の登場に代表される1995年頃。当時はパソコン普及元年とも言われていました。Windows95の登場で、webサイト検索やe-mailが本格的に家庭で使われるようになり、インターネット広告もこのタイミングで徐々に芽が出てきます。

95年にmsnサービス(マイクロソフト運営)が開始し、asahi.comも運営をスタート(こんなに早かったんですね!)。1996年にはYahoo!Japanが営業を開始し、電通の子会社サイバーコミュニケーションズ(cci)が設立されると同時に、同社がYahoo!の広告販売をスタートさせました。ちなみに博報堂系もデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)も同じ年に設立されており、cciと併せて今は「メディアレップ*1」と呼ばれるような業態になっています。両社設立のタイミングがあまりにも近かったので、個人的には「口裏合わせでもしてたのかな?」なんて思ってますが、インターネット広告の成長率・影響力を恐れた電博がWebサイト上の広告枠を真っ先に囲い込むことで同業界でも主導権を確保するためにメディアレップを立ち上げた、なんて語られ方もしているようです。広告を掲載するWebサイト(リアルで言うと「テレビ」や「雑誌」と同じ立ちくらい重要なもの)を握ってしまえば、確実ですからね。

 

90年代WEB広告業界主要プレーヤーの設立年をまとめてみた!

最後に、下記年表(図-2)に90年代のインターネット広告主要プレーヤーをまとめてみました。

 

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(図-2※上段が日本国内の法人、下段が本社設立時のタイミングです)

 

こう見るとオプトがダントツではえ~!と思うんですが、この会社さんはもともとFAX事業をやっていたので、設立当初からインターネット広告業に携わっていたわけではないんですね。代表の鉢嶺さんが“「明日からFAXは一切売ってはならない!」”なんてことをおっしゃった際のエピソードが書かれてましたが、97年に一気にWebへと振り切ったようです。

それから、96年はメディアレップ&Yahoo!Japanの年になり、翌年97年には日本三大インターネット広告会社のひとつアイレップさんが設立されます。当時はまだ社名が「株式会社アスパイア」でした。98年にはサイバーエージェントが設立され、その後ITバブルとともに爆発的な成長を見せていきます。

ちなみに、今や利用しない日がないくらい使われているgoogle先生は98年に本社が設立され、日本法人は2001年に設立されています(個人的にはもっと早い印象でしたが)。

 

こうした主要プレーヤーに関して時系列順に頭に入れておくと、のちのち理解が楽になると思うので、まずは全体像をご説明しました。次回は広告の仕組みにも入り込みます。

 

*1:「広告代理店」とは異なる、広告枠の「卸売屋」的存在。どこかで詳細を記載します